人口減少が地方企業に与える影響
人口減少が進行すると、地方まちと生活に様々な影響が生じます。
まず、生活関連サービスの縮小が起こり、小売、飲食、娯楽、医療機関などが地域から撤退し、生活の不便さが増す可能性があります。これは特に第3次産業に従事する地域の雇用機会の減少にもつながります。
また、税収の減少により行政サービス水準が低下し、公共施設やインフラの老朽化問題が浮上するでしょう。
さらに、地域公共交通の撤退や縮小が予想され、高齢者などの移動手段が限られる中で、生活利便性が低下する可能性があります。
空き家や空き店舗、工場跡地、耕作放棄地の増加も問題となり、景観や治安の悪化が懸念されます。最後に、地域コミュニティの機能が低下し、交流の機会が減少することで、地域の魅力や愛着も失われるかもしれません。
これらの影響が悪循環を生み、人口減少を加速させる可能性があるため、地域全体で問題に取り組むことが重要です。
都市のコンパクト化や交通ネットワークの強化などを通じて、地域づくりを促進し、将来の豊かな暮らしを実現する取り組みを進めていく必要があります。
こいった視点で「人口減少が及ぼす影響」について解説していきます。
目次
人口減少の状況
人口の推移と予測
日本の人口減少は著しく、深刻な社会的課題となっています。少子高齢化が進行し、これが様々な分野に波及しています。まず、数値を見てみましょう。
2022年時点での日本の総人口は約1億2600万人です。
しかし、これはピーク時の2008年からの減少傾向が続いており、将来的には2050年には1億人を下回ると予測されています。
この減少は出生率の低下が主な原因で、2019年における出生率は1.36と低水準が続いています。
総人口と高齢者
高齢者の割合も急激に増加しており、2022年時点で65歳以上の高齢者は総人口の約28%を占めています。
将来的には高齢者の割合が一層増加し、2050年には30%以上に達すると予測されています。
これにより、高齢者の医療・介護ニーズが増加し、社会全体に大きな負担をかけることが懸念されます。
労働力人口も減少しており、2022年時点で15~64歳の人口は約7,000万人弱です。
しかし、この数字も今後は減少し、特に若年層の減少が著しく、地方では人手不足が深刻化しています。
これが企業の採用難や労働生産性の低下に繋がり、経済全体に影響を及ぼしています。
人口減少と空き家問題
地域においても、過疎や空き家の問題が顕在化しています。
例えば、2021年時点での過疎地域(1平方キロメートルあたりの人口が50人以下)は全国で1,700箇所以上あり、これが地域の魅力低下や地域経済の停滞につながっています。
空き家は848万9千戸と3.6%の増加、空き家率は13.6%と過去最高
引用:総務省統計局 実施します 令和5年住宅・土地統計調査
□ 空き家数及び空き家率の推移‐全国(1958年~2018年)
空き家は848万9千戸と、2013年と比べ、29万3千戸(3.6%)の増加となっています。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と、2013年から0.1ポイント上昇し、過去最高となっています。
政府は人口減少に対処するため、働き方改革や女性の活躍推進、外国人労働者の受け入れ拡大などの施策を進めています。
また、地域振興や地域資源の有効活用を促進して、地方の魅力向上にも力を入れています。
総じて、日本の人口減少は数値だけでなく、様々な分野に及ぶ深刻な問題を引き起こしています。
持続可能な社会を築くためには、国全体が協力し、多様な対策を実施することが不可欠な状態といえるでしょう。
人口の動き
都道府県別人口増加率
日本の人口減少は深刻で、都道府県ごとに異なる傾向が見られます。2022年時点の最新の統計を元に、都道府県別に人口減少の状況を見てみましょう。
全国的な傾向として、特に出生率が低い地域や高齢者の割合が高い地域で人口減少が著しい傾向が見られます。出生率が低い都市圏や首都圏では、若年層が減少し、これが将来の労働力不足に繋がる懸念があります。
例えば、東京都は総人口が1,370万人と最も多いものの、20歳未満の割合が15.5%と低く、高齢者が多い傾向があります。
これに対して、青森県や秋田県は高齢者割合が30%を超えており、人口減少が一層進んでいます。
地方では、人口減少が著しい例として、鳥取県や島根県が挙げられます。
これらの地域では出生率が低く、若者の流出が続いているため、総人口が急激に減少しています。
これにより、地域全体の経済や社会基盤が弱体化している実態があります。
一方で、一部の都道府県では若干の増加も見られます。
例えば、沖縄県は若年層の割合が比較的高く、観光業や外国からの移住者が増加しているため、総人口が緩やかに増えています。
総じて、都道府県ごとに人口減少の度合いや影響が異なりますが、全体的に高齢化と少子化が進む中、地域ごとの特性に応じた対策が必要です。
政府や地方自治体は、地域資源を活かした振興策や若者の定住促進など、多角的なアプローチを検討することが重要です。
さらに、人口は全体的に減っている状態の中で、人の移動(社会増減)が、都道府県別に見ると、増減に影響を与えています。
社会増減と自然増減とは?
■社会増減(しゃかいぞうげん)は、移動や社会的な要因によって引き起こされる人口の変動を指します。たとえば、移住や結婚による出生率の変動、社会的な要因による人口の変動が含まれます。
■自然増減(しぜんぞうげん)は、出生率と死亡率によって引き起こされる人口の変動を指します。出生率が死亡率を上回るときに人口が増加し、死亡率が出生率を上回るときに人口が減少します。
これらの用語は、国や地域の人口動態や社会経済的な変化を理解する上で重要です。
年齢と人口
人口ピラミッドは、各年齢層ごとの人口分布を図で表現したもので、その形状が社会の健全性や将来の人口動態を示す指標となります。日本の人口ピラミッドは、少子高齢化が進行していることを明示的に示しています。
2021年の日本の人口ピラミッドを見ると、底辺が狭く、上層部が広がる逆三角形の形状が特徴的です。
これは出生率の低下に伴う若年層の減少と、高齢者層の増加を反映しています。
まず、若年層の減少に注目します。0~4歳や15~19歳の層の人口が減少傾向にあり、これは少子化が進んでいることを示しています。日本の出生率は低水準で推移しており、これが若年層の縮小につながっています。
一方で、高齢者層では65歳以上の人口が急激に増加しています。団塊の世代を中心にした戦後のベビーブームが高齢者へとシフトしており、今後も高齢者の割合が一層増えることが予測されます。
これにより、人口ピラミッドが逆三角形になることで、労働力の減少や高齢者の医療・介護ニーズの増加が社会全体に影響を与えています。また、経済全体においては消費の減少や労働市場の厳しさが生じ、社会保障制度にも大きな負担がかかる懸念があります。
これらの現象は、将来的には地域ごとに差が拡大し、地域格差が生じる可能性があります。対策としては、若者の働きやすい環境づくりや子育て支援、高齢者の自立支援や地域ぐるみのケア体制の整備が求められています。
人口ピラミッドの形状から読み取れるように、日本は深刻な人口構造の変化に直面しており、これに対する包括的かつ柔軟な対策が喫緊の課題となっています。
外国人と日本人口
日本に住む外国人人口は増加傾向が続いており、特に1990年以降の増加が著しく、2020年には総人口の2.2%を占めています。
引用:内閣府 将来推計人口でみる50年後の日本
また、国籍別に外国人人口をみると、「中国」が66万7千人(総数の27.8%)と最も多く、次いで「韓国,朝鮮」が37万5千人(15.6%)、「ベトナム」が32万1千人(13.4%)などとなっています。
総数に占める割合を2015年と比べると、「韓国,朝鮮」が21.5%から15.6%に低下、「中国」が29.2%から27.8%に低下しているのに対し、「ベトナム」が5.0%から13.4%と8.4ポイントの上昇となり、2015年に引き続き上昇しています。
外国人労働者をどう確保して、どう活用していくか?に対し、しっかりと先手を打った企業が将来的な生き残り戦線を勝ち抜けるでしょう。
国策のひとつでもある、「技能実習生」や「特定技能生」などの理解と、活用も視野に入れることがとても重要になってきます。
国の文化にもよりますが、外国人が働かないなんていうのは、もう一昔前の話。
私の個人的意見でもありますが、日本人よりも勤勉な方が多いという印象もあるくらいです。
日本が生き残るため、経済先進国でありつづけるためには、外国人労働者をどう活用していくかが、鍵を握ることは間違いないでしょう。
人口減少と仕事
仕事への人口減少の影響
日本の人口減少は労働市場に大きな影響を与えています。
特に若年層の減少や高齢化が進んでいることで、様々な産業や職種において深刻な課題が生じています。数値を交えながら具体的な影響を解説します。
まず、若年層の減少による労働力不足が顕著です。
2022年時点で、15~64歳の労働力人口は約7,000万人弱であり、これがピーク時よりも減少しています。
これにより、特に製造業やサービス業などの労働力需要が賄いづらくなっています。
例えば、建設業や製造業では技能習得に時間がかかり、若手労働者の不足が深刻な問題となっています。
次に、高齢者労働者の増加が見られます。
65歳以上の労働者が増加傾向にある一方で、高齢者の中には働き続けることが難しい状況にある者も多いです。
これが経済全体において、一部の職種や業界での人材確保を支えていますが、高齢者の就業力には限界もあり、労働市場の活性化には限定的な影響しか与えていません。
若年層の不足や高齢者の増加が進む中で、企業は技術の導入や業務の効率化に注力しています。
例えば、ロボットやAIを活用して業務の自動化を進め、少ない労働力での生産性向上を試みています。
これにより、特に単純労働に従事していた層には雇用の減少が見られています。
また、若者の地方流出が進む中で、地域ごとに人手不足が深刻です。
地域差が拡大することで、都市部では一部の職種での求人が増加する一方で、地方では企業の存続が危ぶまれています。
これが地域格差を生み、地方経済の停滞に繋がっています。
総じて、人口減少は労働市場において供給と需要の不均衡を招いており、これが様々な職種や産業に影響を与えています。
これに対処するためには、働き手の確保だけでなく、教育・技能の向上、地域振興策、労働環境の改善など幅広いアプローチが必要です。
2023年1月時点における従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」と感じている企業は51.7%だった。前年同月から3.9ポイント増加しており、1月としては2019年(53.0%)に次いで2番目の高さとなった。月次ベースにおいても5カ月連続の5割超となり、上昇傾向が顕著となっている。特に大企業では62.1%と高水準で、全体(51.7%)を大きく上回る結果となった。
引用:特別企画: 人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)
人手不足の業種
日本の人口減少による人手不足は、いくつかの主要な業種で深刻な課題を引き起こしています。以下に、具体的な数値を交えながら、人手不足が特に顕著な業種を解説します。
正社員の人手不足割合を業種別にみると、インバウンド需要の高まりによって景況感の回復がみられる「旅館・ホテル」が77.8%で最も高かった。月次でも3カ月連続のトップとなり、人手不足が群を抜いて目立っている。慢性化する人手不足への対応策として「客室稼働率を減らしつつも施設の改修などで単価アップを図り、客室あたりの収益を改善させることで、利益を残せるように工夫を重ねた。そうすれば雑なサービスにならず、リピーターの獲得にもつながると考える」(和歌山県、旅館)のような企業努力の声が聞かれた。 また、IT人材が深刻な「情報サービス」も73.1%と高い。「案件過多によって人手不足を顕著に感じている」(ソフト受託開発、神奈川県)や「受注案件の引き合いは強く、システムエンジニアの確保に向けて動き出しているが、各社とも人手不足の状況」(同、北海道)のような好況による人手不足をあげる声が多数みられた。
引用:帝国データバンク 特別企画: 人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)
- 建設業
2022年時点で、建設業は若年層の不足に悩んでいます。15~29歳の建設労働者は2008年から減少傾向にあり、2022年時点で前年比で約5%減少しています。これにより、建設プロジェクトの遅延や工事コストの上昇が懸念されています。 - 介護・医療業
介護や医療業界でも人手不足が深刻で、高齢者の増加に対応できていません。特に介護職員の不足が顕著で、2022年時点で介護職員数は需給のギャップがあり、高齢者1人あたりの介護職員数が不十分な状態が続いています。 - 観光・サービス業
観光業やサービス業でも若年層の不足が深刻です。ホテルや飲食店、小売業において求人倍率が上昇しており、2022年時点で若年層の働き手不足により、これらの業種での採用難が続いています。 - 情報技術(IT)業
技術の進化に伴い、IT分野でも人手不足が深刻化しています。プログラマーやエンジニアの需要が増加している一方で、2022年時点で求人に対する応募者が不足しており、企業のデジタル化に支障をきたしています。
これらの業種では、若年層の減少や人口構造の変化が業務に影響を与えており、これに対処するためには、働き手の確保だけでなく、働き方改革や新しい労働力の活用、外国人材の積極的な採用など、柔軟で多様な対策が求められています。
5年、10年先を見据えた企業の対策
対策の方向性
中小企業の人口減少と人手不足への対策には、柔軟かつ将来を見据えた取り組みが不可欠です。以下に、5年後と10年後に向けた具体的な対策と方向性を数値を交えて解説します。
1. 効率的な人材育成プログラムの導入
5年後:中小企業が若手従業員を中心に、効果的な研修・教育プログラムを実施。例えば、従業員一人あたりの研修予算を現在の10%増の数値に拡充し、専門的なスキルや業務に必要な知識を提供。
10年後:従業員のスキルやキャリア形成に焦点を当て、今後の業務に必要なデジタルスキルやクリエイティブな能力の育成を重点的に行い、予算を20%増やして継続的なプログラムを展開。
2. 柔軟な働き方の推進
5年後:テレワークやフレックスタイム制度の導入を進め、従業員のワークライフバランスを向上。中小企業の従業員のリモートワーク導入率を現在の10%から20%に引き上げる。
10年後:柔軟な働き方を基本とし、テレワーク導入率を30%に向上させる。これにより、地域差や通勤の負担軽減によって、遠隔地域の優秀な人材も採用の対象となる。
3. 外国人材の活用
5年後:外国人材の受け入れ体制を整備し、外国人従業員の割合を現在の2%から5%に増加させる。これにより、異なる文化や経験を持つ人材を活かし、多様な価値を生み出す。
10年後:外国人材の受け入れ環境を整備し、外国人従業員の割合を10%に引き上げる。多言語対応や文化トレーニングを強化し、国際的なビジネス展開に備える。
4. デジタル化と効率化の推進
5年後:中小企業がデジタルツールの導入を進め、業務の効率化を図る。IT投資を現在の5%から10%に増やし、生産性向上に寄与。
10年後:先端技術の活用や自動化を進め、IT投資を15%に拡充。これにより、少ない従業員でも高い付加価値を生み出す生産形態を確立。
5. 地域連携の強化
5年後:地域の中小企業が連携し、共同プロジェクトや情報交換の場を整備。現在の協業企業数を20%増加させ、地域全体での成果を上げる。
10年後:連携ネットワークを強化し、中小企業同士の情報共有や共同事業を促進。これにより、地域全体でのビジネスエコシステムを構築する。
これらの対策を組み合わせ、中小企業が変化する労働市場に柔軟に対応し、人口減少と人手不足に強靭なビジネスモデルを構築していくことが重要です。
採用戦略
中小企業が人口減少と人手不足を解消するための効果的な採用戦略には、柔軟性、魅力的な働き方、デジタル展開が不可欠です。
最新の採用戦略のひとつに、採用媒体+ホームページがあります。
以下に、具体的な数値とホームページ制作の事例を交えた解説を提供します。
1. 柔軟な働き方の推進
フレキシブルな働き方を促進し、例えば週の中での勤務曜日や労働時間の柔軟な設定を行う。これにより、従業員のワークライフバランスを重視し、効率的かつ満足度の高い働き方を実現。
2. 魅力的な福利厚生の提供
健康保険や厚生年金だけでなく、企業が提供する福利厚生も注力ポイント。例えば、年次有給休暇の取得促進や子育て支援制度の導入など、従業員の生活全般にわたるサポートを強化。
3. デジタルリクルーティングの最適化
ソーシャルメディアや求人ポータルなどを活用し、従業員の声や働き方を発信。求人広告の効果的な出稿として、応募者数を現在の1.5倍に増加させる。
4. 従業員のスキルアップの支援
継続的な研修制度を整備し、従業員のスキル向上をサポート。従業員一人あたりの研修予算を現在の5%から10%に増加させ、スキルを持つ人材の確保と定着を図る。
5. ホームページ制作の成功事例
中小企業A社は、ホームページをリニューアルし、働きやすさや社風を伝えるページを追加。採用ページの閲覧者が増加し、応募数も前年比で30%増加。従業員の声や仕事の魅力を具体的に掲載し、企業のオープンさをアピール。
6. 外部リソースの活用
専門の採用エージェントやヘッドハンティングを積極的に活用。採用コスト対効果を現在の2倍に向上させ、優秀な人材のスカウトと採用効率の向上を実現。
これらの戦略を組み合わせ、中小企業は効果的な採用を実現し、企業の発展と人口減少、人手不足の課題に強く対応できる体制を築くことができます。
まとめ
中小企業が将来の人口減少と人手不足に対処するためには、柔軟な働き方の推進、魅力的な福利厚生の提供、デジタルリクルーティングの最適化、従業員のスキルアップの支援、そして外部リソースの活用が鍵となります。
柔軟性を重視した働き方や充実した福利厚生は、企業の魅力を高め、人材確保に寄与します。デジタルリクルーティングはソーシャルメディアや求人ポータルを活用して広くアピールし、採用ページの最適化で応募数を増加。
従業員のスキルアップをサポートすることで、将来の業務に適した人材を育成します。
また、ホームページ制作の成功事例から、企業の魅力を伝える効果的な手法を学び、外部リソースの活用で効率的かつ優秀な人材の採用を実現します。
これらの戦略を組み合わせ、企業は変動する労働市場に対応し、持続可能な成長と人手不足への強固な対策を構築することが期待されます。
人口減少は避けては通れない道です。
まだ先と思うのか、もうすぐそこまで来ていると思うのかで、対応も変わってくるでしょう。
課題対策に早いということはありません。
万全な体制で挑むことは、企業を盤石化させ、厳しい社会を生き抜く術になるでしょう。
皆で手を取り合い、共に厳しい世界を乗り越えられたらと心から思います。